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HASシリーズとスポーツサイエンス

根性でなんとかする、感覚でつかみとる、などという表現で昭和という時代を象徴することに対し、産業界ではIoT、DXで代表されるデータサイエンス的なアプローチが、比較の意味で令和の時代を象徴することがあります。スポーツの世界も同様です。選手のスキルアップ、チーム総合力の向上、試合や大会のスムーズな運営などに、科学や技術の力がますます重要になっています。ウインブルドンで古くから活躍していたホークアイや、近くではワールドカップ前回大会の(ミトマノイチミリ)などを身近に感じる人も多いでしょう。スポーツにおける計測、あるいは見える化の技術がその代表です。

 

ディテクトでは、モーションキャプチャーシステムや動画ファイルからトラッキングを行う運動計測ソフトウェアをもって、スポーツをはじめとした「計測」というフィールドで、世の実験・研究の分野に関わってきました。近年では、画像処理を応用した野球のスタジアム常設型のボール速度の計測装置を開発しています。計測された投球や、打球の速度や軌跡の結果は、スクリーンに表示されます。これに対し、スポーツ業界でよく見聞されるスピードガンやトラックマンといった機器は、画像ではなく別の技術要素を応用した計測機器となります。

 

(図)常設された2台のカメラで投球・打球の軌跡や速度を計測する

【1】リリースポイントの確認

こと野球について触れるなら、ハイスピードカメラの使われ方で最も多いのは、おそらく投手のボールリリースの見える化でしょう。プレーの結果としてのボールの情報を得るのではなく、投手とボールの関わりを見るために使われます。投球においてボールの運動に意図的に影響を与えられるシーンとして、そのリリースポイントを観察することで、投球の改善への知見を直接得られるのではないか、というアプローチです。より緻密な情報を映像から得るため、通常速度のビデオカメラでは物足りなく、ハイスピードカメラに頼ろうということです。計測ではなくハイスピードカメラが、ただ(見る)ためだけに使われる事例となります。

 

(図)投球のリリースポイントを投手の背後から撮影する

 

ハイスピードカメラでこのリリースポイントの観察をするアプローチは、メジャーリーグや日本プロ野球に限らず、野球界では一般的になっています。ディテクト製品のユーザーには球団やその支援組織という企業・組織もありますが、選手個人での導入事例も有り、選手個人が自身の投球を自前のハイスピードカメラで確認しています。もちろん(見る)だけですべてを(知る)ことにはならないので、その見えた情報に解釈を加えることこそが重要であろうと想像されます。ディテクトのラインナップにおいては、AC電源不要で、カメラとノートPCだけで撮影環境が整うHAS-U2がこの分野では最も実績があり、簡単なセットアップで選手たちの現場をサポートしています。ほかAC電源は必要だが上位モデルのHAS-EXHAS-DX  を導入くださるユーザーも現れています。

【2】相対する選手間の反応速度

ハイスピードカメラを複数台用意して異なる対象を同時に撮影し、その複数の動画を吟味することで新たな知見を得る、という運用もスポーツにおいては重要となります。民生品のカメラは、動画の中の1枚1枚の映像について、複数のカメラ間での同時性を担保することが難しいですが、産業用カメラではナノ秒レベルで同時性を確保することができます。この事はたとえば、ペナルティキックを行うシーンでのキッカーとゴールキーパーの相互関係における反応動作の分析を行う際に、ハイスピードカメラ2台で相対する2人の選手をそれぞれ個別に撮影する、という事例において有効です。

この事例を、弊社のHAS-EXを2台使うことを想定し、民生用のフルハイビジョンカメラ(60FPS)1台運用と比較をするために少し細かい計算を以下並べてみます。

 

HAS-EXをメガピクセル設定として、2mの空間を撮影できる視野を確保した場合、空間の分解能は1画素を元に計算すれば約2mmです。1cm程度の動きは、それが人の所作であれボールの動きであれ十分に見てとれます。他方、同様の撮影をフルハイビジョンカメラ1台で対象の二人を同一視野内におさめて撮影するならば、視野は仮に13mとして1画素が約7mmとなります。これでは1cmの動きが安定的に見えるかどうかは自信のない運用となってしまいます。

時間の分解能についてはさらに顕著に違いが出ます。ボールを蹴った瞬間の情報が1枚の画像で得られたとしても、時速50㎞のボールを想定して計算すると、通常速度のビデオ撮影で1フレーム進むと、約23cm移動してしまいます。一方で1000FPSのハイスピードカメラであれば、同様に1フレームあたり1.4cmのボール移動量での観察が可能となります。1/1000秒刻みで双方の選手の反応が観察できるので、より細かい分析ができるのです。

【3】ゴルフ弾道計測におけるハイスピードカメラ

スポーツとの関わりで言えば、ディテクトゴルフ部門ではハイスピードカメラを内蔵した弾道計測機を開発・販売しています。ゴルフのインパクトの瞬間前後の様子をハイスピードカメラで撮影し、その1打でゴルフボールがどのような軌跡で飛行し、どこまで飛んでどこで止まるかを計測~表示する装置です。打ちっぱなしと呼ばれる何百ヤードもある空間での練習場だけでなく、街中のビルで何百ヤード飛んだ、飛ばないなどが正確に測定できる室内練習場が盛況で、このような計測機も実績がかなり伸びています。弊社のスイングベターシリーズの装置は、インパクト前後のボールとクラブの動きをハイスピードカメラで高速に撮影し、直ちにその弾道を導くための初期値(初速と方向)を計測します。

 

(図)ゴルフ弾道計測機 床置きタイプ(SB-POD Pro/左)と天井設置タイプ(SB-SYGNUS/右)

 

装置は打者に向き合うよう床に配置されるタイプと天井方向から下を見下ろすように配置されるタイプがありますが、計測という数値化が必要なのでいずれも3次元計測を前提としてステレオ撮影を応用しています。

 

また、ゴルフでは打球の曲がり具合も大きな要素であるため、ボールの回転(スピン)も計測します。製品によりますが、ディテクトでは廉価モデルでも1000FPS、マーカーの無い市販のボールでスピン計測するモデルでは7500FPSを採用しています。高速撮影によりボールのディンプルと呼ばれる表面の凹パターンのズレ量を読み取り、スピンを計測します。

 

(図)スピン量計算を専用マーカー無しで計測する事例 7500FPSでの撮影

 

弾道を計測するのが本分である製品ですが、画像が介在する製品なので、「インパクトの瞬間が見える」ことが競合する他社製品に対して付加価値が高いと好評のようです。どのようにボールが飛んだかという結果を知るだけでなく、そのようにボールが飛んだ経緯・背景としてクラブがどのように軌道を描き、どのような角度でボールに接し、どのように打ち出していったか、という情報を映像で提示してくれます。より人間に近いところの情報を知るという要素を網羅することで、プレーの修正をより直感的に行うことができるということです。

 

(図)各種計測データに合わせてインパクトの瞬間が見える化される

 

ゴルフのプレーそのものということで言えば、スイング動作そのものにも関心が集まりますが、これについては120FPSのカメラが採用されています。さらに、スイング中のクラブフェイスの向き・傾きなどをレッスンでは重視するので、カメラのシャッターは1/1000秒以下で切る必要があり、この製品ではこの要請に対応しています。

ハイスピードカメラ(高速度カメラ)

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